肺がん
わが国の肺がんの死亡率は増加の一途をたどっていますが、2001年の全がんによる死亡者数は30万人、このうち肺がんで死亡した人は5万5000人で全体に占める割合は18.3%で第1位を占めています。年間肺がんに罹患[りかん]する人は6万2000人でそのうちの5万5000人が亡くなるのですから、肺がんにかかるとほとんどの人が助からないということになります。肺がんの原因として第1に挙げられるものがたばこです。第2には高齢者の増加、第3にディーゼル車排ガスに代表される大気汚染などです。たばこはからだにいろいろな障害をもたらしますが、特にがんの発生原因になります。筆頭は肺がんですが、喉頭がん、口腔がん、膀胱がん、食道がんなど多くのがんが発生します。米国での調査結果ですが、喫煙者が肺がんで亡くなる率は非喫煙者に比べ、男性で23.9倍、女性で14倍です。わが国の調査では男性で11.4倍、女性で4.4倍と報告されています。
食道の良性腫瘍
食道がんや肉腫以外の良性腫瘍も、食道に発生することがあります。平滑筋腫が多くて、乳頭腫や血管腫はまれです。大部分の症例で症状を訴えませんが、大きくなると、つかえ感、狭窄感、疼痛を訴えます。無症状の小さなものは、無処置で様子を見るだけでよいのですが、大きくて症状のあるものは摘出します。
下咽頭の悪性腫瘍
下咽頭の悪性腫瘍では、がん腫が多く、広がりはすみやかで頸部の食道や喉頭にも及び、頸部食道がんと呼ばれることがあります。咽頭のつかえる感じがあるときには、早期に診断してもらうことが大切です。「声がかれる」「のどがつかえて食べづらい」などの症状とともに「首にしこりがある」ときには、十分な検査が必要です。下咽頭の腫瘍は少しずつ増大の傾向があります。腫瘍が食道や喉頭に広がっている場合は、大胸筋皮弁とか空腸を利用して、下咽頭や食道の再建手術を行わなければならなくなります。したがって、できるだけ早期に診断をして、早期に系統的治療をするべきです。その場合、放射線治療、および頸部リンパ節を徹底的に郭清(清掃)する手術が行われます。